マスターの息子はあまり笑みを零さないとは先に言ったが、ただ一度、最初に会った時だけは違った。


「今日から一緒に暮らすことになったよ」


マスターからの紹介を挟み、私は息子と対面した。

すると彼は私を一目見るなり、幼い笑みを顔一面に広げて抱きついてきたのだ。

マスターのそれとは違う、正に溢れんばかりの笑顔、というものだった。

思わぬ事態に私は戸惑ってしまった。

初対面時にこのような反応をされた場合、対処法はどうすればいいのか、私は知らなかった。