マスターに親類はいなかった。

けれど代わりに莫大なお金が残った。

息子を養うには十分過ぎるお金だった。

彼がどのような仕事をしていたかは結局知らないままだったが、それにしても異常な額だった。

どれだけ働いたのだろう。

どうしてそんなにも仕事に熱を注ぎ込んでいたのか。

その時間を、少しでも息子の為にも割いた方がよかったのではないか。

寂しさを知っているであろう人間が、何故寂しい人間に触れてやらなかったのか。

彼は、マスターは寂しくはなかったのだろうか。

結局、全ては分からないまま終わってしまった。