生まれてもいないのに誕生日。

何か違う気はしたが、彼らがそれを望むなら私に拒否する理由はない。

随分と私も大雑把な思考をするようになったと思う。

何か記念品を買ってくるよ、マスターはそう言ってどこかに出掛けていった。

今日は雨なのに、わざわざそこまでして頂かなくても、と思った時には、既に彼は車に乗り込んでいた。


「飾りつけをしないと」


息子はそう言って張り切っている。

この一年で、彼は随分と明るくなった。

今日は特に楽しそうにしている。

マスターがケーキを買ってくる、と言っていたので、それが楽しみなのかもしれない。

私は、自分の記念日などよりも、彼が笑ってくれることの方に喜びを感じていた。