置いていかれては困ると、私も急いで立ち上がり後を追おうとして、ふと気付く。

先程、彼は私を心配してくれたのだろうか。

そのような言葉をかけてもらったのは初めてではないだろうか。

そのことに気付き、私は『喜び』を感じた。

相変わらず笑顔は見せてくれないが、それでも私のことを認識し、気遣ってくれた。

今もそうだ、先程より歩く速度が若干遅くなっている。

脚部に特に異常は見当たらないが、しかしそれを彼に伝えることはしなかった。

彼のその気遣いの心を無下にするのはよくない。

それにきっとこの年代の子は、そのことを指摘しても照れてそっぽを向いてしまうだけだろう。


「ありがとうございます」


その言葉に背中を押されたように、彼は歩調を速めた。