気がつけば、私は泣いていた。

涙を流す機能がついていたことに驚く。

これも、人間らしさの演出だろうか。

必要な機能だとは、思えない。

けれど、私は今はその機能に感謝していた。

視界がにじむ。

回りが見えなくなる。

思い出も、この幸福な思い出も、全て隠して欲しい。

私から見えなくなって欲しい。

祈るような、思いだった。

人間をサポートする上では全く不要であろうこの機能は、皮肉なことに、ただ私の為に活用できた。

ああ、全て、全て見えなくして。

マスターが好きだと言ったあの空も。

彼らと過ごしたあの家も。

彼らの眠るこのお墓も。

全て見えなくして欲しい。

私には遠過ぎるその場所を。

どうか。

どうか。








……ならば、消してしまえばいい。