掃除の面でも苦労したが、食事でもそうだった。

マスターも息子も、随分な偏食家だった。

きっちりと栄養バランスを考えて出している食事を、彼らは躊躇なく残す。

子供が野菜嫌いなのは分かるが、親もそうでは子供の野菜嫌いなど治らない。


「息子さんの為にも食事はきちんと取って下さい」


私がそう言うと、やはりマスターは苦笑いを浮かべて見せた。

この家に来てからというもの、私は彼に小言ばかりを言っている気がする。

それも仕事の内ではあるのだが、こう怒ってばかりだと、向こうに愛想をつかされそうな予感がしてきた。

お役御免となってしまうのは、さすがに困る。