手を伸ばしても届かない
それは胸が張り裂けそうなほどの現実で。
夏の夜午後9時30分
少し肌寒く感じる
冷たい夜風は健汰の頬を切る。
ホッとしたからなのだろうか?
結愛が愛しいからだろうか?
病気の事実があるからだろうか?
いつの間にか
気づけば頬を涙は流れていた。
{結愛…待っててな?
もう少しで結愛を
こんな病弱な俺だけど力一杯この腕で
抱きしめにいくから。
あと半年なんだよ。
俺が生きれるの。
だけど未だ言えそうにない。}
そう健汰は心の中で呟いた。
何気ない日常
何気なく過ごす時間
いくら異常がなくても
“大丈夫だ”って嘘をついて
口実をつくって
誰かを誤魔化せたとしても
病気は健汰の体を蝕んでいった。
結愛に会えたのは午後10時の事だった。
結愛は少し寒そうにしながら携帯を見て
健汰の事を待ってた。
自転車を押してくる健汰に気づくと
携帯を鞄のなかにしまって
健汰の方に手をふった。
安心した笑顔で。
いつものふんわりした笑顔で。