「すみません、先輩!遅れて。」


息を荒らしながら走ってきた女生徒は、とても可愛らしい容姿をしていた。
長い髪を後ろでシュシュで1つに束ね、さりげなくお化粧を施した顔。
背も私より小さくて、私の肩にも背が届いていない。



どうせなら、こんな女の子に生まれたかった!



小さくて愛らしい女生徒を見て、自分との遥かなる違いを痛感させられた。
小さくて愛らしくて、私がどんなに手を伸ばしても届かない、あこがれの容姿の女生徒は、うるませた瞳で私を見上げた。
普通の男なら、その時点でノックアウトだろう。


そういえばこの子に、見覚えがある。たしか掲示板に貼られていた学校新聞の、学校で一番カッコイイ人、可愛い人ベスト5に選ばれていたような……。
もちろん、可愛い人の方で。



「先輩、私は先輩が女だってわかってます。でも…好きなんです。」



いくら可愛くても、もう一度言わせてもらおう。



私はレズとかバイという存在ではない(もう一度声を大にして言いたい)。
答えはもちろん、決まっていた。



「ごめん。君の気持ちは受け入れられない……。」



今まで何度も、女の子からこんな告白を受けたことはある。
断るときはいつも、心が痛い。
でも、無理といったら無理なのだ。


私が困ったような顔でそう答えて頭を下げると、女生徒はしばらく押し黙った。
私がゆっくりと顔をあげれば、女生徒も少し傷ついた顔をしていたが、それでも笑顔を浮かべると、何も言わずに頭を下げて去っていた。