「優がご機嫌斜めにならないよう、せいぜい頑張れよ」


意地悪く言う俺に、健吾はまた苦笑しているらしい。
だけどその次には、逆に健吾が意地悪く笑った。


『龍輝は真由ちゃんとしないのか?』

「え?」


『永遠に一緒に居られるんだから、お前ならするよな?』


タバコの煙を吐き出しながら笑う健吾。

それに対する俺の答えは…――、




「そんな小っ恥ずかしいことするわけないだろ」




――…答えは、ノーだ。


『学校ではしょっちゅうキスしてるくせに、花火大会はしないんだ?』

「学校は知り合いしか居ないからいいけど、花火大会は知らない人ばっかりじゃん。
真由の気持ちとか考えると、さすがにな」


『あー…なるほど』

「まぁ、大雅なら“旅の恥は掻き捨て”とか言うんだろうけど」


『あはは、旅ってほどの距離でもないけどな』

「確かに」


くつくつと笑い合う中で、健吾はまた煙を吐き出す。
だけどそれはさっきの時とは違い、凄くゆっくりで、何かを懐かしむようなものだった。

そして放たれた言葉は、まさに過去を懐かしむもの。




『去年は、真っ暗な浜辺で花火を上げたな』