……。


その後、帰ってきた美奈に勧められるがまま、朔也は横山家に泊まることになり、
ヤンチャな哲の相手に苦戦していたけれど、それでもどこか、アイツの顔はスッキリとしていた。




……。




…で、夕食後。


「夏休みの課題にまったく手をつけてないって、どういう神経してるんだよ」


呆れた顔で言葉を放つ朔也。
その言葉の通り…、まったく手をつけていないのだ。

国語辞典一冊分くらいあるだろうプリントの山。
こんなにあったら、逆にやる気を無くしてしまう。


「…そう言うお前はどうなんだよ?」

「初日に終わってる」


「はぁ!? どうやったらこの量を初日で終わらせるんだよ!?」

「…龍輝だからこの量なんだろ?
俺は全教科プリント1枚か2枚だったから」


「うっわありえねー…差別じゃん。
学年1位だからって贔屓(ひいき)すんなよクソ教師」

「授業サボってた時の分が追加になってるだけだろ。 自業自得」

「う…」


…そう言われてしまうと、何も言えなくなる。
確かに、授業サボってたのは俺だもんなぁ…。


「あ、大雅も龍輝と同じくらい課題が出てたけど、アイツはもう終わらせてた」

「うぇ、マジか…。
大雅の奴、なんも言わねぇくせにちゃっかり終わってんのかよー…」


「アイツ、あんなだけど成績は優秀だからね」

「…どうせ俺は馬鹿ですよーだ」


「なにガキみたいに言ってんだよ。
さ、どこから行く?」


クイッとメガネを直す朔也。
顔が真剣すぎてこえーよ馬鹿。




「…あのさぁ朔也、全部のプリントに下書きしてくれない?」

「却下」


「…ですよねー」


……はぁ…。
この量、さすがに今日中には終わんねぇよなぁ。
マジで、どうするかな…。




「朔也くんごめんねー。
この馬鹿の相手、疲れるでしょ?」


コーヒーをテーブルに置いた美奈。
それに対する朔也は、「慣れてます」と微笑んだ。


「へぇ〜今の高校生はこういうこと習ってるんだぁ。
学生は大変よねぇ。どうせ社会に出たら数学の公式なんて使わないのにね」


けらけらと笑う美奈に朔也は微笑みのまま頷き、コーヒーを口に運ぶ。
それからまた美奈を見て、小さく小さく言った。