「…大雅、なんで明日なんだよ」

「お前に話したいことがある。
だから、真由ちゃんに会うのは明日でいい」


…なんだよそれ。
まだ何かある、ってことか?




「龍輝」

「…何?」




「俺を殴れ」


……は?


「俺、真由ちゃんに酷いコト言った。 だから殴れ」

「…龍輝、それなら俺のことも殴れ」


「なんでだよ、朔ちゃんは関係無いだろ?」

「俺も酷いコトした。 だから殴って欲しい」


「朔ちゃんは酷いコトなんてしてないだろ。
真由ちゃんのことをちゃんと想って、ちゃんと言葉に出来てるじゃん」

「いや…、酷いコトしたんだよ」


…いったい、何の話をしてるんだ…?




「あのさ、全然話が見えてこないんだけど、どういうこと?」


大雅と朔也の間に割り込み、それぞれの顔を交互に見る。


「真由ちゃんに酷いコト言ったんだよ」

「真由に酷いコトしたんだよ」


…二人の言葉が重なり、耳障りな音となって響く。




「…いっぺんに喋んなボケ。
大雅、どういうこと? なんのことを言ってんだ?」


初めに言い出した大雅を見つめ、その場に座り直す。




「…真由ちゃんから話を聞いた時、俺、酷いコト言っちゃったんだ。
“たかがキスでそんなに悩むか?”って。
だけどそれは本心じゃなくて…なんつーか、その場を取り繕うために出た言葉、っつーか…。

……本当は沢良木 涼太にすげームカついてた。
今すぐ沢良木を殴り飛ばしたかった。
でもそれは俺の役目じゃないから、俺が手ぇ出すのは違うだろ?って思った。

だから自分の感情を押さえ込んで、いつものノリで言葉を出した。
傷つけてるってわかってても、そのままのノリで言葉を続けてしまったんだ。

…俺は真由ちゃんのことを傷つけた。 だから殴れ」