黒衣を掴み、ベルデウィウスの顔がすぐ近くにある状態でシルヴィアは目をぱちくりとさせた。
「まず一つ、『新調合』した薬ということ。二つ、効果が『構想』では、ということ…」
険しい眼差しを向けるベルデウィウスにシルヴィアははて?と首をひねる。
だから、何?と眼差しがベルデウィウスに問う。
「………、使える薬かもわからないモノを私が友に使うとでも?」
「? なら、私が使えない薬を他者に与えるとでも?」
問いかけに問いかけを返し、
「私は私の知識を持って、完成度の高い魔法薬を調合しているの。私の知識は完璧で、完全よ。だから、この薬は100倍の効力があるの。それは、私の構想で証明されているのよ」
「………」
頭を抱えたくなったベルデウィウスは呻くようにシルヴィアに告げる。
「…大した自信だな」
「自信じゃないわ。これは、当たり前のことよ。私の知識は完璧で、完全なのだから」
ふくよかとは言えない胸を張りながら、満面の笑みを浮かべて告げる。



「私の薬を持って行って。ただで差し上げます。もしも、この薬が100倍の効果が無かったのなら私を殺しに来てください」
「…は?」
「だから、私を殺しに来てくださいと言ったんです。この薬が効かなかったということは、あなたのお友達が助けられなかったということでしょう?魔法使いでなく、魔法研究者《ディーン》を頼ったということは、あなたほどの魔力《マナ》を持ってでも助けられない怪我なのでしょう?なら、藁にでもすがるようにこの薬を使ってください。そして、もし助けられなかったのなら、すべては私の責任です」
なにを、…。
絶句するベルデウィウスに追い打ちをかけるように、シルヴィアは微笑む。



「薬を受け取らず、悔むのなら、賭けに負けて悔み、私を怨んでください」



薬を取ってきますね。と言って本を散らかしたまま螺旋階段の上へと消えた。
茫然とシルヴィアの背を見送り、
「…………」
彼女の言葉の意味するところに気付く。
つまり、助けられなかったら――己を怨むな、私を怨め、ということだ。
今日、初めて会った者に何故そこまで言えるのか――。

それほどまでに、その薬の出来に自信があるのか。



どういう魂胆なのか。