などと、嘘を言ってしまった。
シルヴィアはその言葉に目を見開き、
「薬は効かなかった。それを言いに来た」
その言葉を聞いた。
「……そう。それは残念でした…」
さて、どうするのか。
薬の弁解をするのか。
私のせいではないと喚くか。
ベルデウィウスは驚いたシルヴィアの表情を冷めた眼差しで見つめた。
だが――。
シルヴィアはまぶたを閉じ、そして開けた瞬間――微笑んだ。



「では、私を殺してください。あなたは賭けに負けたのです」



……。
耳を疑う、と言うのはこのことだろうか。
いや、わずかながらにも会話を交わした中で―――この少女がこう言い出すことは分かっていただろう。
耳を疑うというのは、いつから『賭け』となっていたのか。
あれは、『例え話』ではなかったのか。



「存分に、殺してください」



ずいっと身体をベルデウィウスに差し出すシルヴィアから逃れるように数歩後退する。
「?」
きょとんとして、もう一歩シルヴィアが前に出る、そしてベルデウィウスが下がる。
「……??」
あれー?と首をひねるシルヴィアに、ベルデウィウスが白旗を上げた。