『コンビニに行こう!』


『もう…!こんなつもりなかったのにぃ…』


恥ずかしすぎて…純さんから視線を反らし、寝返りをうった…



背を向けた私に純さんは、
『ハルちゃん!初めてってことは…付き合ったこともないの?』


後ろから抱きしめる…


『…いましたけど…キスまででした…。その先は…やっぱり…踏み切れなかったんです…。恐くて…』


そう言うと純さんは


『…なんだ…付き合ったことあんのか…なんかムカつく…。』

剥れた声で私から離れて、今度は純さんが私に背を向けた…



『えっ?ちょっと…純さん?聞いたくせにぃ…』


私は焦って背を向けてしまった純さんを揺すった。


顔だけ振り向いた純さんは

『じゃあ…俺も怖かった?』


まだ少し剥れてる…。


そんな子供っぽい純さんにドキドキしてしまう…。




『…はい…。でも…純さんとなら……嬉しい方が勝ってます…。』


純さんの頬にキスをした。



純さんがあお向けになったので、今は私が純さんを見下ろす…


純さんは…、

『ハルちゃん…おいで…』


私を引き寄せた…



『付き合うのは初めてじゃなかったけど…これからはハルちゃん全部俺のものだから…。離さないから…。』



強く抱きしめられた私は…

『はい…。』


とだけ、返事をした…。



ようやく笑顔に戻った純さんは…


『やばい…。また我慢できなくなりそう…』



顔を赤くした純さん…


『もう!ダメ〜っ!』


私は純さんから離れ、急いで側にあったタオルケットを身体に巻いた。




だけど…後ろから純さんに包まれ…


『じゃあ…ご飯終わったらね…!』


って耳元で囁いた…。





…もう…!純さんのエッチ!



でも…一つになる前よりももっと…


愛してます………。



ずっと…ずっと……


傍にいます…。




だから…今までできなかったこと…沢山しようね…













そのあと…私は台所に立ち、夕飯を作り始めた…。


後ろからそれを見ている幸せそうな純さん…。



今まで他の人に見られても別に気にしなかったのに…


恥ずかしくて…作りづらかった…

でも…いつか…馴れるよね…?!




できあがったハンバーグを美味しそうに食べてくれた純さん…

すっごい幸せ…。

好きな人が美味しそうに食べてくれることがこんなにも嬉しいなんて…




…純さん………


これからもっと…もぉ〜っと腕をふるうから…



ずっと傍にいてね………












あの告白から…

純さんは私の彼に…

私は純さんの彼女になった…。


もうそれだけで嬉しくて…

他に望めない…だって望んだら…罰があたるんじゃないかって思ってた…。


だから…純さんの迷惑にだけはなりたくないし…いろんなことを我慢した…。





純さんの勤める会社は属に言う“一流企業”…



新入社員は雑用に追われ…かなり忙しい…

帰りもかなり遅くて…会えるのは週に一度…。


週休2日だけど…1日はゆっくり一人で過ごしたいだろうから我慢する…。



毎日会えないから…せめて声だけでも聞きたいけど…

疲れているだろうし…迷惑がかかるから…メールだけ…



夜くらい電話しても…なんて思うけど…


重いとか…ウザいとか…我が儘…と思われたくなかったし…なにより、嫌われたら…って思うと怖くて…


我慢するんだ…。



でも…この我慢が…


純さんを不安にしていたなんて…


私は気付かなかった…。



お互いが我慢して…お互いがお互いを想い合っているからこそ…我慢して…



初めて…ケンカをしてしまった…。









やっと会えた土曜日…


でもせっかく会えたのに…純さんはかなり不機嫌で…。

あまり話をしてくれず…話を振っても一言返ってくるだけ…


今までこんなことなくて…すごく怖かった…


気付かない内に何かしてしまったんじゃないか…って不安になった。




最近、忙しすぎて疲れてそうだったし…なにより、これ以上一緒にいて嫌われたくなくて…帰りたかった。



だって…昼御飯を作っても…

『美味しい…』

も言ってくれない…。


いつもなら耳にタコができるくらい言ってくれるのに…。



不安で…

もしかしたら…純さんは会社に気になる人ができたんじゃないか…


なんて一番恐れていた思いが込み上げる…


だって…純さんはすごくモテていたし…


昔、拓さんが言ってたんだ…。

“大学時代、何人にもコクられてた”って…


そんなことを思い出してしまい…余計に不安が押し寄せてくる…



でも…仕事中でもメールくれるし…いつも気にかけてくれたから…我慢できたのに…



こんなにあからさまに態度が変わると…怖い…



逃げたくなった…


逃げても…しようがないけど…ちょっとでも長く純さんの彼女でいたかったし…純さんから別れを切り出されたくなかった…。





『ごちそうさま』


そう言って無言でかたずける純さん…

私も何も言わずにかたずける…







食器を洗い終わって、いつものように純さんにコーヒーを入れた…。



でも、純さんの分だけ…。


一人分のカップをテーブルにおいて…
帰る準備をしていると…


『…帰るの?』

やっと声をかけてくれたけど…冷たく…一言だけ…



『…はい。なんだか疲れてるみたいですし…』


冷たい目から逃れるように目線を反らす…



『疲れてなんかないよ!っていうかさぁ…ハルちゃん…俺に何か言うことあんじゃないの?』


純さんは突っかかるように言ってくる…


『何もないです…』


純さんの冷たい視線が…辛くて…

一刻も早く逃げたくて…カバンを手に取った…。



『ハルちゃん…もう俺のこと好きじゃないだろ?』


突然の純さんの一言に…

ビックリした…


…何で?…それは純さんでしょ…?





『そんなわけ…ないじゃないですか…』


私は声が震えた…


『じゃあ…どうしていつもメールしかしてくれないんだよ…?なんで休みは1日しか会わないんだよ…?………これから…他のやつと会うためだろ?』



純さんが初めて私に怒鳴る…


しかも…すごく…冷たい目で…




…私はただ…純さんに嫌われたくなくて…我慢してただけ…


私だって…本当は毎日だって会いたいのに…


毎日声を聞きたいのに…


我慢してただけ…



そう叫びたいのに…


涙の方が先に溢れて…声が出なかった…。



ポタポタ涙を流すけど…純さんは今日は拭ってくれない…


いつもなら…拭ってくれるのに…




ただ…涙を流す私を…冷たい目で…悲しい目で…

見つめるだけ…


ただ涙で声がでなかっただけだけど…




純さんは何も言わない私を見て…

『何も言わないのは…やっぱりそうなのか…?』


今度は静かに問いかけた。

勘違いされてしまった…。


あわてて…

『…ち…がう…』

やっと出せた言葉に…

『何が違うんだよ…』


そう吐き捨てた純さんはため息をついてから、

『俺…見たんだ…。たまたま仕事でハルちゃんの大学の近くを通ったからさ…お昼だったし…一緒にって思って…そしたらハルちゃん…知らないやつと二人で楽しそうに歩いてた…。…………そいつのとこに行くんだろ?』


…えっ?!…純さん何を言ってるの?

誰のこと?…いつ?二人で?





…あっ………!もしかして…太田さん?



確かに…大学に久しぶりに太田さんがやってきて…太田さんに連れられてお昼に行った…。

でも…あれは…