『コンビニに行こう!』

『えっ…』

拓さんは絶句してた…



『もう…これ以上…何も言わないで下さい。傷つくだけですから…。やめて下さい…』




そう笑顔で告げてから一人で家に帰った…。




帰ってきて、携帯を見ると…


すごい回数の着信とメール…



全部純さんからだった…



メールは見たくなくて、見ずに全部消した…。



着信も見たくなくて…電源を落とした…





もう考えるのはよそう…




私は平気………




自分に言い聞かせた。




その夜は眠れなかった…。


だからずっと…


明けていく空を眺めていた…。






私はあれから純さんを避けまくった…



私のシフトに合わせてシフトを組む純さんが嫌で、私はいろんな人にシフトを代わってもらった。


純さんがバイトじゃないのに休憩室にいたときはあからさまに避けた。

目は決して合わすことはなかった…。



純さんや就職する人たちが今月で辞める…と聞いたときも…寂しさよりも安堵していた。


純さんと顔を合わせることもなくなるから…



だって…純さんに面と向かって会ってしまったら…


私は普通でいられない…





だから送別会にすら参加せず、私はその日もバイトをしていた。


店長さんにも、

『行ってもいいよ!』

って言われたけれど…


『いいんです!店長さんと奥さんだけじゃ大変ですから…』


と、笑顔で断った…。





…私はあれから作り笑顔が得意になった。


そして泣けなくなった。




“失恋”って…


こんなに辛いものだったっけ…




そんなことを冷静に考えてることが可笑しくなって…

一人笑ってしまった…。




一人…倉庫に入る……。



棚にもたれ掛かり、私は静かに目を閉じた……。







…純さん………。


ありがとう…さよなら……




私は心の中で純さんに別れを告げた…




もう会うこともない…



純さん…大好きでした…。












私は三年生になった…。


なっても私の毎日は相変わらずで…


大学…サークル…バイト…
その繰り返し…


単調な毎日……

気が付けばまた忙しい夏がやってくる…


新しい恋もできず……



諦めるって決めて…



諦めたはずなのに……



純さんをかなり引きずっている諦めの悪い曖昧な私…





他の人に告白は何度かしてもらったけれど…


やっぱり純さん以上に思えることはなかった…。




それに…コウさんが目を光らせているお陰で、告白してくれる人もいなくなった…。










バイトの方はというと…


私は夏に向けての新人教育係…


店長さんに信頼され、私は第二のマリさんになった。



新人さんには“ハル姉”なんて言われてしまっている私…



まぁ…マリさんの迫力には負けるけど…



新人の子は男の子と女の子…二人…。




いつかの私と純さんみたい…。


でも違うのは、二人はすでにカップル…ということ。



助け合いながらレジを覚える二人を羨ましく思ってしまう…。




…レジが苦手だった純さん…。



上手く行かなくて落ち込んでいたな…




…純さん…なんであのとき追いかけてきてくれたの?


なんで探してくれたの?



純さん…私、今更ながら後悔しちゃってる…




…純さん…


……純さん………。



会いたいです…。



やっぱり私の中で、純さんは消えません…








店のドアが開く…。


『いらっしゃいませ!』

新人さんの手本になるように大きな声で挨拶をする…



新人さんもあとに続く…。



入ってきた人を見ると……



なんで……………?




私は固まってしまった…。




だって…もう二度と会えない…


会わないと思っていた純さんがいたから…










純さんはスーツを来ていて…


私の知っている純さんではない気がした…。


別人のようだった。







私を見つめながら、ゆっくり近づく純さん…。





新人さんを忘れ…


私は純さんに釘付けになった。









『ハルちゃん…久しぶり!』


話すの…久しぶりだ…。



スーツを着ている純さんは別人に見えても、笑顔は変わってなかった。



あの…優しい…大好きな笑顔だった。






『…ど……して…?』


そんな一言さえマトモに話せない…



『だって…俺、ハルちゃんに話、してないもん。話あるって言ったよね?』



『話?』



『うん!そろそろ終わるよね?』


その言葉に、時計を見ると、たしかに終わる時間。




…なんで知ってるの?




そう思いながらも胸は張り裂けそうにドキドキしてる。




新人さんを店長さんに任せ、私は休憩室へと入った。









休憩室には純さんが座ってる…。



…どうしたらいいの?



軽くパニックを起こしている私に、


『ハルちゃんが教育係とはなぁ…』


信じられないといった感じで言う純さん…。



『それって、私が頼りないってことですか?』


『違うよ。なんかしっかりしたんだなって…。強くなった気がする。前のハルちゃんは…守ってあげなきゃ…って感じだった。』



『フフフ…私でも強くなるんですよ!』



…あれ…?


私…笑ってる……



作り笑顔じゃなく…


自然に…笑ってた……?










『ハルちゃん…俺、話があるんだ。…今度はちゃんと聞いて…。』



純さん…緊張してる…?



少し震える声で話始めた…。















俺は、いつ頃からハルちゃんを好きになったんだろう…



多分…初めて会ったときから…


気になってしようがなかったんだ…。



最初は妹みたいにかわいいからだ…

って思ってた。



というか、そう思おうとしていたんだ。



だって、俺には“彼女”という存在がいたから…




でも、俺は本気で“彼女”が好きな訳じゃなかった。


と、いうより、今まで本気で好きになったことはなかったんだ。



別にトラウマなどがあったわけではないけど…

女の子を本気で好きになることがなかった。






俺は、小さいときから女の子の視線を感じていた。


友達は俺はモテる!なんて言ってたけど…


何となくそうなのかな…って思っていたけど…



面と向かって告白してくる子ってあまりいなかった。