砂漠の夜は寒い。
昼間の熱気はどこへ行ったか、太陽に代わる月はあまりにも冷淡で…砂を巻き上げながら吹き過ぎて行く風が、どうにも一行には憎たらしく思えた。
穴掘り親子の街を過ぎてから、さらに砂漠の中で幾つかの街に行き着いた。
しかしながら、どれもが廃墟と化し、また猛禽だの虫だのがわんさか湧いて寄り集まっていた。
その中に一つ、人は無事だった小さな村があった。
しかし民は絶望の淵にあり、事情を訊けば、どうやら村の家屋を荒したのは英国兵ではないとのことで。
『我らは神の使い、野蛮は西の虎狼共を退治するため、我らに食を援助せよ』
そう言って神の使いとやらは食い物と水を強要する。
逆らえば、前の村の通り人も家畜も皆殺し。
「ならば民は、誰に守られるんでしょうね」
アルファは、例の慈悲深い紳士な面で悲しんでいるようだった。
ジンは鼻で笑って応えた。
「そのための帝国援助隊だろう」
「ああ、そうですね、援助が行き届いていないんで無能隊と勘違いしていました」
「お前…最近妙に辛辣になったな」
「誰の所為だと」
アルファはイラついた目でジンを睨んだ。