呼び出し音が20回鳴って、


「起きてるわけがねえよなあ」


と諦めて切ろうとした時、


『はい、もすもす、平野ですけども』


念願のばあちゃんの声が返って来て、


「あっ、おれおれ、おれだ、修司」


慌てて受話口を耳に当てがい直した。


「ごめん、寝てたべ」


『なんだ、なんした!』


ばあちゃんは慌てふためいた声で言った。


『まっさがおめえ、怪我したんでねえべな! 修司!』


「は? なしてや! 怪我なんかしてねえ」


笑いながら返事をすると、少し長い沈黙のあと、長い長い溜息が聞こえてきた。


「ばあちゃん、なんした?」


『あやあー……いがったじゃー。こったら夜中に電話してくっから』


「ああ……」


普段7時頃には寝てしまうじいちゃんとばあちゃんにしたら、10時という時間はもう深夜なのだ。


『何がおおぎだ怪我したんだべがど思って……あやー、たまげだー』


「ごめんな、ばあちゃん。要らねえ心配かげだな」


この電話で目が覚めて、痛い足をひょこひょこ引きずりながら起きて来るばあちゃんの姿を想像して、胸が痛くなった。


「ごめんな、ばあちゃん」


申し訳ない事をしてしまった。


『なんもなんも。いんだいんだ。修司が元気だばいいんだ。してや?』


「え?」


『何したなえ? 何が用事っこあったんだべ? んだいて電話してきたんでねえなが?』


「ああ、んだ! んだんだ、あのよう」


とにかく、今、伝えておこうと思ったのだ。


おれの大事な家族に。


じいちゃんとばあちゃんは、おれの親みたいな存在なのだから。