「いるじゃねえか。お前が。何のために桜花に入ったんだよ」


平野がいるじゃねえか。


その一言は確実におれの中の何かに火をつけた。


ガアン、とぶん殴られたような衝撃だった。


「平野に足りねえのは才能じゃなくて、努力でもなくて、自信だろ。桜花に来たからには、やるしかねえんだよ!」


ちっきしょう。


歯を食いしばる。


菊地先輩を睨んだ。


でも、何も言い返すことができない。


なぜなら、まさにその通りだからだ。


痛いとこをど突かれた。


見破られてしまった。


図星だ。


おれは……自信がなかったのだ。


入部してすぐに自信なんてものはこっぱ微塵に砕かれてしまっていた。


練習も部員たち個々の力も、全てハイレベルで。


何でこんな地獄みたいなとこに来てしまったのかって。


表面上では平気な顔してたけど、練習についていくことさえ本当にやっとやっとで。


でも、誰も弱音なんか吐かないから、おれも吐き出せなくて。


本当はこれっぽっちも平気じゃないのに、蹴り落とされるのが怖くて。


毎日毎日、必死だった。


自信が持てなくて、もがいて、足掻いていた。


「そんなに自信がねえなら無理だな。ここじゃ通用しねえよ。桜花はそういうとこだ」


くっそー。


情けねえぜ。


「黙ってねえで、何か言い返して来いよ」


先輩に言われて、とっさに言い返した。


「いいんですか!」


もう、やけくそ。


売り言葉に買い言葉。


「何が」


先輩は仕掛けるような言い方で、


「本当にいいんですね!」


おれはそれに食ってかかった。