9、10、11、12月。


年が明けて、1、2、3、4、5、6月。


7月。


夏の甲子園出場の切符がかかっている地方大会に間に合うか、合わないか。


まさにギリギリ瀬戸際なのだ。


「絶対、満足はすんなよ。貪欲になれ、平野」


夏までには絶対戻って来るから、と菊地先輩はさらっと言って爽やかに笑った。


「センターは平野に託した」


先輩はそうやって簡単に笑うけど。


おれはどうしても笑うなんて事が出来なくて、必死にもがいていた。


今日は、なんて1日だろう。


鞠子の過去を知ったことで、ただでさえ困惑してるってのに。


菊地先輩の決断まで……。


何だよ、次から次から。


こんなんじゃ、心が幾つあっても足りないし、気持ちが追いついてけねえよ。


おれは両手で帽子をぐしゃりと歪ませた。


「……何でですか」


めまいを起こしてしまいそうだった。


だって。


あんまりじゃないか。


「何でって、お前……だから、手術するからだよ」


何度も言わせんじゃねえよ、と少しぶっきらぼうに返されて、


「じゃなくて!」


おれはぶるぶると頭を振り、


「そうじゃなくて!」


と明らかにぶっきらぼうに返した。


冷静ではいられなかった。


だって、心は一個しかないから、整理がつかないのだ。


「そういう事じゃなくて」


おれが聞きたいのは、そういう事じゃなくて。


「何で……そんな大事なことってか、大切なポジション、おれなんかに託せるんですか!」


「……はああ?」


菊地先輩の顔色が明らかに変わった。