だから何だって言うんだよ。


一体、鞠子が何したっていうんだよ。


むっとしていると、


「千夏にメールきたんだって。つい、この間」


な、平野、と菊地先輩に肩を叩かれた。


「先月な。少年院から出て来たらしいんだ」


「……え」


「その……鞠ちゃんの幼なじみ」


胸の辺りが妙にそわそわした。


「だから、気を付けろってさ」


そわそわが、もやもやに変わる。


「部では先輩後輩だし、選手とマネだからしょうがねえけど。それ以外では、鞠ちゃんの私生活には首突っ込むなって。千夏」


何だよ、それ。


「何すか、それ」


ケッ、と舌打ちをして、おれはずんずん歩き続けた。


別に過去を知ったからと言って、鞠子の私生活に首を突っ込むつもりはない。


おせっかいする気もない。


でも、絶対、納得できない。


「それじゃあまるで、鞠子が災厄の元みたいじゃないっすか」


鞠子が何したっていうんだよ。


あいつ。


別に何も悪い事してねえのに。


「納得できないっす」


ええええ。


そうだったんすか。


じゃあ、鞠子には深く関わんない方がいいっすね。


なんて。


言えるわけねえよ。


だってもう、おれたちは、同じ夢を追いかける仲間になってるんだから。


「くだらね……」


気付いた時、込み上がる感情をコントロールできなくなっていて、おれの足は突き進むように早足になっていた。


「おい、平野。なあ、待てって」


どしどし突き進むおれに追いついた菊地先輩が肩を掴んできた。


「平野」