「そんな鞠ちゃんに非難が集中したらしくてさ」


こんな状態で、何が野球だよ。


休部とかうまい事言われてっけど、これじゃ廃部と何も変わんねえだろうがよ。


元はと言えば、安西の親が原因だろ。


お前がマネになってなきゃ、こんな事になってなかったのに。


何様のつもりだよ。


あいつが少年院送りになったのも、お前ん家のせいだ。


笑わせんじゃねえよ。


もう、誰も野球なんかやる気ねえんだよ。


野球やりたくても、できねえんだから。


もう、おれたち、このメンバーでグラウンドに立つことは一生ねえんだよ。


野球部めちゃくちゃにしたやつがでしゃばんなよ!   


ぶっ壊しといて、マネージャー面してんじゃねえよ!


鞠子が野球部ぶっ壊したんだろ!


「……って。それで、そいつら桜花のエスカレーター下りて公立だったり、国立だったり。見事にバラバラに散ったらしくてさ。当時のやつら、今はもうひとりも野球続けてないらしい」


通りかかった道の脇の用水路から、ゲコゲコ、カエルの鳴き声がする。


「それ、全部、千夏さんから聞いた話なんですか」


「うん。あいつ、鞠ちゃんと同じで幼稚園から桜花だから」


「そう……なんすか」


上手に声を出せなくなっていた。


それくらい、おれは得体の知れない何かと葛藤していた。


「千夏のダチん中に、当時の部員が何人か居るらしくて、今でも時々メール来るって。まあ、そいつらはもう終わった事だからって、割り切ってるらしいけど」


おれは返事をするわけでもなく、相づちを打つわけでもなく、悶絶としながら歩みを進めた。


むしゃくしゃして、どうにもならなかった。


「でも、今でも野球部のマネージャーやってる鞠ちゃんの事、あんま良く思ってねえやつらの何人か居るらしくてな」