じいちゃんが言った。


「南高校でもいいねが。南高校でも、甲子園目指せるべ?」


ごくっ。


唾を飲む。


そうだ。


じいちゃんの言っている事は間違いじゃない。


南高だろうが桜花だろうが、甲子園を目指す事ならできる。


でも、返事をしないおれに、じいちゃんの渋い声がもうひとつ落下した。


「南高校でなば甲子園目指せねえって、おめえはそう思うのが」


そう言った後本当にすぐに、じいちゃんは話のサイコロを響也と健吾に転がした。


「響也ど健吾も、桜花大附属さ行ぐんだが?」


いや、と先に答えたのは健吾だった。


「おれは予定通り、南高受験する。響也の球、受けたいんだ」


一拍あって、響也が続けた。


「おれも。南高。憧れの投手がいる」


ふんっ、とじいちゃんの鼻息が聞こえた。


でも、じいちゃんはそれっきりで何も話さない。


黙り込んでしまったようだった。


今、じいちゃんがどんな顔をしているのか気になる。


でも、おれは土下座し続けた。


額が畳と一体化してしまうんじゃないかと思うくらい、必死に頭を下げ続けた。


自分でもぶったまげる。


自分に、こんな熱い部分があった事に、びっくりだ。


どうしても譲れないものが、この平野修司にもあったのだ。


「何だって、そったら遠い高校さ行がねばねんだ。修司……」


ばあちゃんの声に、心が張り裂けてしまいそうだった。


心臓の真ん中がちくっと痛んだ。