「やいっ」


じいちゃんの声は特別大きいわけでもなく、いつも通りのなずなのに、なぜか背中がしゃんとした。


「4時なるねが。国会中継なんとなったべ」


時計で時刻を確認したじいちゃんが、穏やかな表情でリモコンのスイッチを押した。


「ほほっ。まだやってらが。いやいやいや。堂々巡りだで。同じ事、朝から言ってらべ。だめだな。今の政治はだめだ」


言え。


言えよ、おれ。


言ったところで端っから反対される事くらい、覚悟の上じゃねえか。


でも、言ってみない事には始まらないし。


始まらないことには、終わりだってないのだ。


ひっくり返すことだってできない。


言う。


膝の上でぎゅうっと拳を握る。


言う。


言うったら、言う。


どどどどどど。


滝の音みたいだ。


心臓が、水を割るような凄まじい音を立てている。


こめかみからしたたる汗が、頬をつるりと伝った。


「修司」


響也がおれの脇腹を突いた。


うん。


おれは頷いて、すうっと息を吸った。


「じいちゃん。ばあちゃん。大事な話があるんだ」