プライドの高い砂月は<お願い>をするようなタイプではない。


しかし、そうも言ってられず、プライドも羞恥心も何もかも捨てて砂月はそう言ったのだ。


芭琉和が聞いたら驚くであろう程めったにないことだった。


凌はとっさにつかでいた手を放した。


砂月はそのすきに凌のもとを離れる。


「ありがとうっ」


そう言い残すと砂月は奏多を追い掛けた。


奏多は芭琉和を好いている。


だけど、無性に今奏多に会いたくなって、砂月は走りだした。


傷付くとわかっていても、どうしても止められなかった。


身体が勝手に動くのだ。