「すごい、すごいよ!」
肩まである黒髪の少女が、一人の少女の手を握り締めながら騒いでいた。
「……気味が悪いと思わないの?」
腰辺りまであるブロンドの髪に、青の掛かった翡翠色の瞳。もう一人の少女は困惑していた。
どうなっているんだ?
川原に座っている二人の少女を、青年は眺める。辺りを見渡せば、そこは見たことのない景色だった。
ここはもしかして、彼女の記憶の中? だとしたら、あの二人の少女は――。
「そんなこと思う訳ないよ! だってこの世界を創ったんでしょ? 本当に、すごいね!」
そっと黒髪の少女は〝彼女〟の胸元に触れる。
「ありがとう。命を与えてくれて」
その言葉に、彼女は一瞬驚いたような顔をしたが、嬉しそうに笑う。そんな彼女を、呆然と彼は見つめた。
……あんな風に、笑うこともできたんだな。
脳裏に浮かぶものは、虚ろな瞳に、悲しげな顔をした、彼女の姿。
幸せそうな彼女に手を伸ばす。刹那、突然目の前が眩(まばゆ)く光る。
その眩しさに、思わず彼は目を瞑った。
「――どうして……こんなことに……」
先ほどとは打って変わったその口調に、青年は目を開ける。
これ、は……。
目の前に広がる景色に、彼は息を呑んだ。
建物は崩れ落ち、木々は焦げている。黒髪の少女は腰を抜かし、座り込む。
〝彼女〟は唇を噛み締め、俯いていた。
辺りに倒れている人々。地面は血の海に覆われていた。
「此処は危ない。私について来て。そうすれば、安全だから」
少女の手を取り、彼女は走り出す。