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廃墟ビルの屋上。冷たい風が、髪を靡かす。
人々の賑わいを失った街では、相変わらず銃声が鳴り響いていた。薄雲に覆われた陽は、どこか寂しげに見える。
「今日もいないか……」
青年ただ一人が、そこにいた。
( また明日、会いましょう )
その約束が守られることは、なかった。そして六日が経っても、少女が姿を現すことはなかった。
「……まだ夕刻まで時間がある。普通この時間帯に地下から出て来る人はいないよな」
あの少女は時間帯など、気にしていなかったけれど。
それでも、もしかしたら陽がある内は危険だと思ったのかもしれない。
陽が沈み始め、茜色の空が紫紺へと染まるその時刻(とき)に、もう一度此処へ来よう。
廃墟ビルを後にする。やけに、街中は静かだった。
胸騒ぎがする……。どうしてだ?
無意識に足早になる。不思議なことに、どこからか狙い撃たれるかもしれないという不安はなかった。