寂寂(せきせき)たる街中を、まるでもぬけの殻かのように、青年はただ呆然と歩き続ける。
旧市街で敵が少ないといっても、いつ撃ち殺されてもおかしくない状況である。
それをわかっていて、彼は歩き続けた。
( 君だって、生き残りたいと思うだろう? )
白銀の髪に、虚ろな翡翠色の瞳。
自分が生き残るために必死な者を、人間を、哀れだと言った、その少女。
そんな彼女に向かって、自分が言った言葉をふと思い出した。
「生き残りたい、か」
あの時の自分と今の自分は、驚くほどに違っている。
生き残りたい。死ぬことが怖い。
そういった思いが、今の自分にはない。
なぜ? と自分に問いかけても、答えは出ない。ただただ、胸の中が苦しくて、虚しい。
地下通路に入る。足音が、やけに大きく聞こえた。
早く、この胸の内の苦しみから逃れたい。
この悲しみと虚しさの理由を、早く知りたい。
会って間もないあの少女が、その理由を知っているとは思えない。
けれど彼女は、何かを知っている。とても大きな何かを。
そしてそれを、隠している。