陽が昇り、殺し合いはまた始まる。いつものように、敵を何人も殺していく。
昼が過ぎようと、それは変わらない。
「くそっ……一体、これは何なんだよ」
青年は歯を食い縛る。足元には血に塗れた敵が倒れていた。
( ――哀れね )
相手を殺す度に、その言葉が――少女の声が、脳裏に響く。軽く頭痛もしている。
一晩寝ても、胸の内にあるわだかまりは消えなかった。それどころか、増す一方である。
「どうしたんだよ、俺……」
全く理由がわからない。頭を整理することすら、できない。
「………」
緩い風が頬を撫でる。そっと顔を上げた。
目に映る茜色の空に、夕陽と同じ色に染まる景色。
辺りが茜色に染まり、空は紫紺へと染まっていく。この時間の時だけ、俺は心から安心することができる。
「少し落ち着くか……」
しばらくの間、青年は何も考えずに目の前に広がる景色を眺める。
刹那。
( こんな世界、なくなってしまえばいいのかな? )
振り返った少女の姿。靡く白銀の髪と、虚ろな翡翠色の瞳。そして、切なげな笑み。
「あ……」
青年は目を見開ける。夕陽に背を向け、彼は走り出す。
息を切らしながらみすぼらしい街中を走り抜け、廃墟ビルの前で足を止めた。
肩で息をしながら、少しの間そこで立ち竦む。ごくりと唾を飲み込み、青年はその中へと足を踏み入れた。
薄暗い中、荒んだ階段を上っていく。屋上に近づくにつれて、鼓動が速くなる。
目の前に現れた錆びれた扉のドアノブに、おずおずと手を伸ばした。
古びた音を立てながら、扉は開かれる。そよ風が、髪を靡かした。