音を立て落ちる、一冊の本。包み込まれる、小さな体。 「お願いだから」 彼女は口を噤む。掠れた声に遮られ、口を噤む。 「自分を大切にしてくれ」 世界に従う焦燥感、期待に背く悲嘆。 彼の背に腕を回し、彼女は強く抱き締めた。 第二章【静けさと、虚ろな瞳】