壮大な空と、わびしい街。その街中だけでなく、世界中で悲しみと憎しみの悲鳴が響いていた。
白銀の髪を靡かせ、少女は世界を見つめる。痛いと泣き叫ぶ、自分を見つめる。
昨日まで重苦しく、押し潰されてしまいそうだった心が、今では軽くなっていた。優しく、核(コア)に触れる。
覚醒した時、私は〝希望〟と呼ばれた。私自身が、希望だった。
けれどその価値も、とうの昔に失った。
彼らの希望の対象は〝私〟であり、〝私〟の希望の対象は〝世界〟で、〝世界の中身〟が希望の対象となることはなかった。
――けれど、今は違う。
( ありがとう )
私の希望の対象は、私の過ちをも受け入れ、傍にいてくれる、彼。
「……カンナ」
私は、あなたがいれば〝私〟自身と向き合うことができる。〝私〟から逃れようとせず、世界を、歪んでしまった私の世界を、受け入れていこうと思うことができる。
「全て、あなたのおかげよ」
あなたがあの日私と出会わなければ、闇の中で閉じ篭る私に手を差し伸べる者は、きっと現れることがなかった。
彼女は瞼を閉じ、頬を撫でる風を感じる。そして泣き叫ぶ世界を感じようとした、その時だった。
錆びれた扉が、音を立て、勢いよく開かれる。振り向いた翡翠色の瞳に映ったのは、肩で息をする青年の姿。
「どうしたの?」
一段上がっているところから下り、少女は彼のもとへ寄る。
「……ごめん、俺のせいだ」
俯いており表情はわからないが、震えた声から、悔しそうな思いが伝わる。