「何も言わないのか、言えないのか」


龍が呟くと、巧は憤りを抑えるような低い声で「関係ないだろ」とだけ呟いた。


「無きにしもあらず」


龍は急に語調を強めた。


「あいつは桜の親友だからな。桜がキレたら手に負えない」


「・・・えみには陸のこと言うな」


「言わない方がえみの為になるのかよ」


それとも、お前が知られたくないだけか?


その問いだけを残して龍は帰っていった。


「・・・相変わらずうぜー奴」


ひとり呟く。


分かってる。


黙ってても、えみのためにならないことくらい。


だけど、今だけは。


えみには伝えたくない−・・・