「ちょっ、巧!?」


巧はそのまま先に行ってしまう。


「巧!」


呼びかけても、答えてくれない。


・・・本気だったか、不安だった。


信じきれなくて、その気持ちは巧を傷つけた?


「巧!」


走って、ようやく追いついて巧のブレザーの裾を掴む。


「・・・っはあ」


息が切れる。


だけど、ちゃんと伝えたい。


「・・・手、かして?」


巧が差し出した手に、自分の手を絡めた。


「あたしだけの特権」


それを言うのも恥ずかしかったけど、ちゃんと言わなきゃ伝わらない。


そう思ったから。


「・・・巧の隣はあたしだけの場所だって思っていいかな」


「・・・当然」


巧の横顔をちらりと見たら、これ以上なく優しく微笑んでいた。