かわって理事長室。


「失礼いたしまーす」


コンコンとノックしたのち、「お呼びでしょうか?」と、校長の武田が理事長室にのそのそと顔を出した。


腕にはフランクミュラーのごっつい腕時計がこれでもかと輝いてる。


氷室の大ブレイクにより、校長の給料もグングン上がり、武田はすっかり羽振りが良くなっていた。


今日のランチは一食二千円もある高級ステーキ丼だ。


夜は夜で、銀座の寿司屋を予約していた。


回転寿司が精一杯だった男が今や銀座の寿司屋。


資本主義社会はこれだから面白いし、怖いともいえる。


「あれを見て。
あんな怪文書が送られてきたのよ」


ゴルフパターを握る手を休め、理事長の里中順子が机の上の紙を指さした。


「あらあら。
怪文書とはおだやかじゃないですね」


武田は用紙を拾い上げると、


「なになに・・・」と声に出して読みあげた。