日曜日の昼下がりのこと。


なぜか、ほたると桜井智香は渋谷センター街のはずれにある小洒落たカフェに身を潜めていた。


二人とも共通のファッション。


キャップを目深にかぶり、サングラスとマスクで人相を覆っている。


なぜこんな怪しい格好でいるのか。


それは、氷室と宮原かすみのデートを尾行するためである。


「お客様、お待たせしました。
アイスカフェモカとキャラメルマキアートでございます。
ごゆっくり・・・」


そう言ってほたるたちのテーブルにグラスを置くときの店員の顔は引きつっていた。


全国に指名手配された容疑者を目撃したような気分だろう。


数メートル先では氷室とかすみが、ウニのパスタ、マルガリータピザ、シーザーサラダ、イタリアンワインなどがのった華やかなテーブルを囲み、とりとめない談笑を繰り広げていた。


「基本的なこと聞いていい?」と智香。


「いきなりなによ?」


「こんな貴重な週末を犠牲にして、何で私たち、二人のデートを監視してるんだっけ?」


「さっきもいったでしょ。
私たちの友情のためだよ」


ほたるは胸を張って即答した。