やがて宮原かすみはすっくと立ち上がると、ドアノブを回し、勢いよく外側へ押した。


「あなた、本当は私と氷室先生のことが聞きたくて保健室に来たんでしょ?」


「は、はい」


「やっぱりね・・・
さあ、用が済んだのなら教室に戻りなさい。
いつまでもここにいると、友達が心配しちゃうわよ。
元気な姿を見せて安心させてあげなさい」


「わ、わかりました」


ほたるは何とか自力で立ち上がると、そろりそろりと歩きだした。


亀とどっこいどっこいの緩慢な歩み。


背中を丸めているせいで実物以上に小柄に見えてしまう。


恋のダメージは計り知れなかった。


「ありがとうございました」


一歩外に出て、室内に向き直り、小さな声で一礼した。


ドアの隙間から顔だけを覗かせた宮原かすみが口を開いた。