「おいコラ!
早く次の段取りだよ!」


小声で、そして早口でまくしたてる。


「あっ、そうだった」


ほたるは回れ右をして校舎に戻ると、職員室のドアをそろりと開けた。


「どうした?」


ドアの一番手前。


整理整頓の行き届いた机で書き物をしていた氷室と目が合った。


「タイヘンデス。
アオイガ、ヘンナヒトニ・・・」


何度か練習したが本番ではやはり棒読みになってしまった。


大根役者以下だ。


噛まないだけましと思うしかない。


私に女優の資質はなさそうだ。


ほたるはあらためて思い知る。