「最悪の事態は免れたわね」


里中が安堵の表情を浮かべる。


「安心するのはまだ早いですよ」


武田は厳しい顔を保ったままだ。


「氷室先生は確実に月越ほたるを家まで送り届けます」


「それはどうかしら。
月越本人が拒んでるみたいだけど」


「いいえ。
どんなことがあっても家まで送ります。
そのようにインプットされてるんです。
道中、何かをきっかけに再び二人が盛り上がらないとも限りませんよ」


「もう・・・世話の焼ける二人ね」


里中の溜息が寒さで白く濁った。