まさみが溜息まじりに尋ねた。


「何かあったのね。
ずっと何かを想い悩んでるみたいだもの。
よかったらお母さんに話してみてよ」


「お母さんには関係ないよ。
これは私の問題だから。
ほっといてよ」


「ほっとけないわよ。
これでも私、ほたるのお母さんよ」


「何が母親よ」


ほたるは鼻で笑った。


「勝手に母親面しないでよ。
うちら、血だってつながってないのに」


「!」


まさみはたまらず、娘の頬を思い切り叩いた。


ほたるに手をあげたのはこれが初めてだった。


「なんてことするのよ!」


ほたるは目に涙をいっぱい溜めると


「お母さんのバカ!」と叫び、階段を駆け下りた。


ドアを開けると、外は土砂降りだった。


空はどんよりと分厚い雲に覆われている。


ほたるはためらうことなく、びしょ濡れのアスファルトを駆けた。


冷たい雨粒が全身を襲う。


それでも駆けた。