そこへ―


氷室が髪を風になびかせて現れた。


松崎に用があるらしい。


「松崎先生、練習中に申し訳ありません」


そう前置きすると、


「保護者から松崎先生あてに電話が入っております」と告げた。


松崎は思い当たる節があるらしく「わかったわ」というと、すぐに職員室に向かった。


そのとき―


再び、ゆりりんが本性を露わにした。


ほたるはふたたび読唇術を使った。


「ねえディレクター、あの先生を取材しましょうよ」


「でも、あの先生はソフトボールの顧問でも何でもないし」


「いいのよ。
顧問ってことにしちゃいましょうよ」


「ちょっと強引じゃないか?
ゆりりんの気持ちもわかるけど、嘘の情報はよくないよ。
ボクらが作ってるこの番組、広くとらえれば報道番組なわけだしさ」