やがてゆりりんが作り笑顔を貼り付け、松崎に向かっていった。


「先生! どうもありがとうございました。
もう結構です。
生徒さんの指導に戻られてください」


松崎がホッとした顔で持ち場に戻る。


しかしー


ゆりりんは松崎の背中を睨み付けていた。


「この役立たずめ」と小声でささやきながら。


ウサギの皮をかぶったオオカミといった感じである。


グランドでは部員がキャッチボールをして肩を温めていた。


その他の部活は今日に限り、休止なのだ。


もちろん、取材の邪魔になってはいけないという配慮からである。


しかし、多くの生徒がグランドの周辺や教室のベランダからゆりりんを見ていた。


ちゃっかり双眼鏡を持参してる者も。


中にはビデオカメラで撮影してる者もいる。


動画サイトにでもアップするつもりなのだろう。


男たちの中には色紙とペンを持参している者もいた。


こっちのほうがよっぽど練習の邪魔だし、目障りといえた。