中学三年生にして初めての塾入りは、トントン拍子に進んだ。
「ヒノサカ塾」という個別指導の塾。特に珍しくもなんともない、普通の所だ。

ただ、この塾を選んだ理由はある。

それは、「同じ学校の生徒及び知り合い」が一人もいないこと。それを条件に、塾選びはお母さんに任せた。

「それじゃ、来週からよろしくね」

先生の優しそうな笑顔にぺこりと頭を下げ、お母さんとあたしは車に乗り込む。
扉を閉めると同時に、お母さんが言った。

「……ちゃんと勉強、しなさいよ」
「わかってる」

短く返して、それ以上の会話を拒絶するように鞄から携帯を取り出した。カチカチ、と操作してまず最初にメールチェック。

2件ほどきていた一方に目を通す。