「マリアちゃん?」
マスターの声で我に返って、急に恥ずかしくなって来た。
突然見つめたりして、相手もおかしく思ってるに違いないし!
こんなこと今までなかったのに!
「何?マスター。」
あくまで平静を装って聞くと、
「あれ?マリアちゃんは隼人くんに会ったことなかったっけ?}
マスターの視線の先には、さっきの少年の姿があった。
「ハヤト…?」
「うちの常連さんだよ。」
「この店に常連なんていたの…?」
真顔で聞き返すと、
「ひどいなー!いなかったらとっくにこの店つぶれてるよ!」
マスターは顔を真っ赤にして起こってきた。
「冗談。」
私が軽く微笑んで返すと、今度はこちらの反撃とばかりにマスターの口角がニヤリと上がった。
「そういえば、君がその席なんて珍しいね?」
「私だってたまには気分転換するし。」
「それは意外だな。君は、変化を拒否していると感じていたんだが。」
「そうなの?」
意外な言葉に、私は目を丸くした。
「ところで、最近変わったこととかはないかい?」
「別にないけど。」
「そっか。よかった。」
ほっと安堵のため息をつくマスター。
そんな真面目そうな話をするマスターは珍しくて、私は少し驚いた。
「どうしたの?」
「マリアちゃんには前話しただろ?最近チーム間抗争が激しくなってるって。君はほっといても勝手に巻き込まれそうだしね。ちょっと心配してたんだよ?」
「そうだったの。」
「そうそー。」
「でも、もし私が何かに巻き込まれたとして、マスターに何が出来るの?」
「少なくとも、何かは出来るさ。1人よりも、ずっとね。」
「私はそうは思わない。」
「そうか。寂しいなぁ。」
マスターは、ははと軽く笑った。
「人は結局、1人なの。」
私のその言葉に、マスターは少し寂しげな瞳で、言った。

「君は、本当に変わらないね。」