そうこうしているうちに、いつの間にかマスターの喫茶店に着いていた。
「喫茶店 まかろん」
カランッと小気味いいベルの音を響かせ、少し寂しげな店内に入ると、コーヒーとミルクの匂いが広がる。店だけで行けば、本当に雰囲気がいい。
でも。
「いらっしゃーい!!マリアちゃん!!」
モダンな店のつくりに全く合わないマスターの声が響く。
なんというか、白い服にはちまきで、「ヘイ大将!」とか言ってそうだ。
というか、絶対そっちのほうが似合う。
「いつもの。」
「オッケー♪」
まぢで、マスターと店が合わなすぎる…っ!
何回来ても堪えるのが大変な笑いをこらえつつ、私は店の奥に向かった。

「あれ?」
珍しい。
こんな(マスターの)店に、私以外のお客さんがいるなんて。
「おーい、マリアちゃーん。なんか俺、今すごい失礼なこと思われた気がするんだけどー」
「気のせいじゃない?}
マスターにそう返しつつ、私は1番奥より1つ手前の席に座った。
いつもは1番奥の席に座るんだけど。今日は先客がいたから。
私より少し年上くらいの、黒の学生服に身を包んだ、大人びた少年。
そんな人、今までいくらでも見てきたはずなのに、私はなぜかその少年を見つめていた。
ううん、違う。見つめてたんじゃない。

…目が離せなかったんだ。