でも、震えだしたのは沙里だけじゃなかった。
グループの少女たちは、教室の入り口のほうを見て、真っ青になって震えていた。
「どうしたの、あんたたち」
沙里の頭を掴んで、髪を引っ張っていた、リーダー格の少女が、ようやく少女たちの異変に気づいて、振り返った。


「最低は、どっちだか。」


私は、彼女たちを冷たい目で見ていた。
「…っマリア…っ!!」
私は、素知らぬ顔で机に向かい、鞄を取った。

「大丈夫?」
横目で、沙里という少女に声をかける。
彼女は恐怖のあまり何も言えないようで、ただ口をパクパクと動かしている。

「な、何言ってんのマリア!沙里がマリアの事むかつくって、嫌がらせしようって言うから、私たち止めてたんだよ!!」
「必死で言い訳してるとこ悪いけど、全部聞こえてたから。」
「!」
「あなたたちが、私が今まで付き合ったことある男のこと好きで、あっさり捨てた私を憎んでるのは知ってるから。」
「…。」
黙り込む少女たち。
「あ、本当にそうだったんだ。今カマかけただけ。」
「そんなっ!!」
「とりあえず、友達には手、出さないほうがいいんじゃない?あなたたちのこと、心配して言ったんだから。」
「…」
私はそのまま、教室を出ようとする。しかし、ふと立ち止まって。
「あと、陰口言うときくらい、周り気にしたほうがいいと思うよ?」

まあ、あなたたちがどうなろうと、興味はないけど。

教室を出た瞬間、リーダー格の少女の、「くそっ…」という呟きが聞こえた。

言いたいことがあるなら、直接私に言えばいいのに。

「バカな子。」