「おー、本物だぜ、ハヤト!!」
目をキラキラさせながら、ハヤトの方を向くタクミ。
「あー。とにかく、さっさとこの抗争終わらせるぞ。」
そんなタクミを軽くあしらいながら、彼は歩き出そうとする。
と、その時、彼の手から滴るしずくに目がいった。
「あ、待って」
私はハンカチを取り出し、彼の手のひらに絶妙な力加減で結んだ。
「この怪我、私のせいでしょ?」
私より背の高い彼を見上げると、彼の漆黒の瞳と目が合った。
「あぁ、サンキュ」
そう言うと、彼は驚くほど綺麗に微笑んだ。

1人、原色の集団の方へ進んでいくハヤト。
「1人で大丈夫なの?」
ふと、隣にいたタクミに聞いた。
「あ~、大丈夫大丈夫。アレぐらいの雑魚、ハヤトなら普通怪我1つしないし。ま、」
タクミは鋭い瞳でハヤトを見つめた。
「今日は珍しく負傷しちゃったけど」
憧れのような、嫉妬のような。
信頼のような、寂しげなような。
見守るような、射抜くような。
「でも今のハヤトなら100%大丈夫だな。」
さっきの表情が無かったようにへらっと笑って私を見るタクミ。
私の見間違いか、それとも、一見軽そうな彼の、隠された一面なのか。
「どういうこと?」
でも私はあえてそれに気づかないフリをして聞く。
見られたく一面なら、知られたくない自分なら、わざわざ踏み込むことはない。
そう思ったから。

「うちの総長さんは、一般人を巻き込むのが大嫌いだからね。相当今キレてるよ。」
「あれで?」
「一見冷静に見えても、あいつ熱いやつだからね~。お、ほら。」
言葉を切ったタクミが見つめる方向を見ると、原色たちが咆哮を上げながら彼に突進していくところだった。

あの人数で、本当に大丈夫なの?
私の心配なんてそっちのけで、タクミは笑った。

「ほら、始まるよ。」