「ぐあっ!!」
原色男達の悲鳴が聞こえて、私が目を開けると、
漆黒の特攻服の背に踊る、純白の『黒鳥』が見えた。
彼の登場に、その場の空気ががらりと変わったのを感じた。
「く、『黒の王』…っ!!」
原色の一角から悲鳴混じりに彼の2つ名が聞こえた。
あぁ、この人が…、最強の男。
どうやら彼が原色のナイフを掴んで私を助けてくれたらしい。
彼の手のひらからは、赤い血が滴り落ちていた。
一応、お礼を言うべきかな?こういう場合…
私が口を開こうとすると、
「ハーヤト♪」
さっき原色を挑発した明るい茶髪の青年が、笑顔でやってきた。
「タクミ」
「遅せーじゃん!俺らおかげでピンチだったんですけど~。」
タクミと呼ばれた青年は、頬を膨らませていった。
「ざけんな。てめぇは俺に全部押し付けたいだけだろ。」
ハヤトと呼ばれた少年が、タクミの頬をつねる。
「ぷ。」
いかにも仲がよさそうなそのやり取りが面白くて、私は思わず笑った。
「あ、笑った。」
タクミが目をまん丸にして言う。
『黒鳥』のほかのメンバーも同じように驚いた顔をして私を見ている。
「え」
「やば!『マリア』の笑顔を見てしまった~!」
タクミが「ひゃっほう!」なんて叫ぶ。
どういうこと?それ
喜ぶようなことかな?
てか、なんで私のこと知って…
「噂は恭さん…マスターの方が分かるかな?に、聞いてるぜー。絶世の美少女って、ほんとだったんだな~」
まじまじと私を見つめるタクミ。
ていうか、あいつ(くそマスター)か…っ!!
私は、まかろんではしゃぐハイテンションなマスターを思い出した。
くしゅん!
「あれ~?誰か俺の噂してんのかなー?」
店で鼻をすするマスター。