「このくらいの寒さ、司は部活で慣れてるよ。俺はちょっと虚勢張ってがんばってるだけ」
「ちょっ……風邪ひかないようにしてくださいよっ? 風邪なんてひいたら心配する前にリィから遠ざけますからねっ」
 言うと、唯は軽快な足取りで去っていった。
 その後、待てども待てども翠は来ない。
 俺たちの間には冷たい風が吹いていくのみ。
「診察って言ってたよな?」
「そう聞いたけど?」
 秋兄がそう言いたくなるのもわからなくない。時計は九時半を知らせようとしていたからだ。
 三十分も診察って何やってるんだか……。
 俺は苛立つままに父さんに電話をかけた。
 通話状態になるなり、
『用件は?』
 傍若無人な応答が返ってくる。が、これが日常であり、これと同等の返答以外を聞いたためしがない。