真白さんは藤の模様が美しい着物を着ていた。帯留めと髪飾りも藤を模った七宝焼きのよう。銀色の帯が豪奢に見えるけれど、全体のバランスがとても良く、上品な真白さんの雰囲気を引き立てているように思う。
 真白さんとビューティーサロンを出ると、ちらほらと招待客の姿があった。
 サロンに入る前は私たち以外にはパレススタッフしか見かけなかったのに、今は通路に数人、ティーラウンジは着飾った人で賑わっている。
 あたりを見回すと、和装の人もいれば洋装の人もいる。年齢の幅も広く、目に飛び込む煌びやかな装いに火花が散りそうだった。私は真白さんに遅れないように、そして転ばないように気をつけて歩く。
 中には真白さんに気づき声をかけてくる人もいる。真白さんは手短に挨拶を済ませ、そのたびに「ごめんなさいね」と私を振り返る。私は「いいえ」と答えながら、場違いな空気をひしひしと感じていた。