「引き止めたいなら私がその役を引き受けよう?」
「……あのっ――」 
 言葉に詰まってしまい、「お願いします」の意味をこめて頭を下げると、静さんはすぐ行動に移してくれた。
「司、退席を許可した覚えはない」
 たった一言発しただけ。けれど、遠ざかっていく靴音はピタリと止む。
「それは静さんの一存? それとも……」
「お姫様のご要望だ」
 あとに続く会話はなく、こちらに近づいてくる足音のみが聞こえた。
 そして、さきほどと同じ距離から、
「選んだのは翠だから。俺に困るとか言わないように」
「……はい」
 ツカサはもといた席へ戻った。
 正直、リラックスには程遠いティータイムだったけれど、こうしてみんなが揃うのは久しぶりで、目の前の大きなツリーはきれいだし、今日は湊先生たちの結婚式でおめでたくて、それにクリスマスイブで空にはキラキラ星が瞬いてるし、何がなんだかよくわからないけれど、今日はこれでいいのかも、と思えた。