「まぁね、どうせ俺は藤宮警備の一社員ですよぉっだ」
 冗談ぽく拗ねて見せた唯兄は、そのまま御崎さんたちを室内に招き入れた。
「でも、できれば給仕につくのはひとりにしてほしいなー。二対三じゃ落ち着かないよ」
 唯兄が文句を言うと、御崎さんの合図でふたりのスタッフが即座に部屋をあとにした。
「ここで総支配人が残っちゃうあたりがリィのビップ待遇を感じずにはいられないよね」
 テーブルから少し離れた場所で居心地の悪さを感じていると、
「別にリィが縮こまることないよ。少し縮こまったほうがいいのはオーナーと湊さんだってば」
 言いながら、唯兄に手を引かれてテーブルに着いた。
「お言葉ですが、オーナーと湊様は唯芹様のこともよくご存知だと思います」
 御崎さんの言葉の途中で、唯兄は電気が走ったみたいに身を震わせた。
「やっ、やめてよっ! 唯芹様とか気色悪いっ。誰のことかと思ったじゃんっ」